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「大分類・中分類・小分類」は世界と共通なのか?
― 日 本 の 公 文 書 管 理 と 海 外 の 分 類 思 想 の 違 い
日本の官公庁や自治体で文書分類の話をすると、多くの場合、 • 大分類
• 中分類 • 小分類 という三階層構造が前提になります。 多くの文書管理システムでも、この形が採用されています。そのため、 「文書分類とは、三階層で構成するもの」という認識は、日本ではかなり一般的です。 では、この考え方は世界でも共通なのでしょうか。結論から言えば、 「階層構造そのもの」は海外にも存在するしかし、「分類の考え方」には違いがあると言えると思います。 日本の分類は「収納構造」と結びついている 日本の文書分類は、長く紙文書管理を前提に発展してきました。そのため分類体系は、 • 何に綴じるのか
(特定の簿冊・ファイル・フォルダー) • それをどこに置くのか (棚・キャビネット・引出し) • さらに、それら什器をどう整理するのか という、物理的収納構造と密接に結びついていました。そして、その基礎になったのは、実際に存在していた簿冊・フォルダー群です。 つまり、日本の分類体系は、最初から業務分析に基づいて抽象設計されたというよ り、現実に存在する簿冊やフォルダーを整理・体系化していく中で形成された側面が強いと考えられます。 「似た文書を集める」という発想 また、日本の文書分類では、「似たような文書を集めてグルーピングする」という考え方が広く用いられてきました。 これは紙文書管理において、非常に実務的な合理性を持っていました。なぜなら、 業務そのものを詳細に分析しなくても、実際に発生している文書を見ながら分類できるためです。 つまり、 • 現在存在している簿冊
• 実際に使われているフォルダー • 日々発生する文書 を見ながら、 • 似たものを集める
• 名前を付ける • まとめて保管する ことで、分類体系を構築できます。これは、 • 全庁的な業務分析
• 業務プロセス整理 • 機能分析 を行わなくても、実務上は一定程度運用できるという大きな利点がありました。 また、「どこに綴じたか」が分かれば、個別文書を探し当てることも可能でした。 日本型分類の難しさ 一方で、この方式には弱点もありました。 それは、「実際に存在する文書」を基礎に分類するという性質上、 • 業務そのものを分析する
• 業務全体を整理する • 業務の流れを把握する • 記録を追跡する という観点が、相対的に弱くなりやすい点です。 また、日本の分類表では、中分類に何を持たせるのかが統一されにくい傾向もあります。例えば、 • 業務分野
• 手続 • 制度 • 組織 • 対象 • 案件 など、さまざまな意味が混在することがあります。 さらに、小分類についても、「文書を入れる箱」として扱われることが多く、 • とりあえず入れておく
• 関連がありそうだからまとめる • 後で探しやすいよう集約する という運用が起こりやすくなります。結果として、 • 「諸務」
• 「共通」 • 「その他」 • 「雑件」 • 「その他文書ファイル」 などに、多様な文書が集まりやすくなります。 特に「諸務」に至っては、実質的に“物置”のような状態になっているケースも少なくありません。例えば、 • 照会回答
• 軽易な連絡 • 会議通知 • 一時保管資料 • 未整理文書 • 他課関係資料 など、本来性質の異なる文書が混在することがあります。 海外でも三階層は存在する しかし「意味」が異なる 一方、海外にも階層型分類は存在します。 例えば、オーストラリアなどのレコードマネジメントでは、 • Function
• Activity • Transaction という構造がよく知られています。これを日本語で、 • 主機能
• 副機能 • 処理単位 などと説明する例もあります。そのため、 「海外も結局は三階層分類で、日本と同じではないか」と理解されることもあります。 確かに、形式だけ見れば、 Function └ Activity └ Transaction も、 大分類 └ 中分類 └ 小分類 も、どちらも階層構造です。しかし重要なのは、「何を基準に階層化しているか」です。 日本の分類体系は、歴史的には、 • 簿冊
• フォルダー • 保管 • 配置 など、紙文書の収納・整理と強く結びついて発展してきました。 一方、海外の Function / Activity / Transaction は、本来、組織がどのような業務を行っているかを分析するための枠組みとして用いられることが多くあります。 つまり、 形としては似ていても、背後にある思想や出発点は必ずしも同じではないという点が重要なのだと思います。 海外は「業務」を基準に考える 海外のレコードマネジメントでは、組織全体の業務を整理し、それに基づいて分類体系を構築する という考え方が比較的強く見られます。 例えば、オーストラリアで知られる DIRKS(ダークス)という考え方があります。 DIRKS とは、 「組織がどのような業務を行い、どのような記録を残す必要があるか」を分析しながら、記録管理を設計していく方法論です。 そのため、 • どんな業務か
• どんな手続か • 何のための記録か を重視する傾向があります。 つまり、「今ある簿冊をどう整理するか」ではなく、「組織業務をどう整理するか」から分類体系を考える傾向が、日本より強いように思われます。 おわりに 「大分類・中分類・小分類」という考え方そのものは、世界的に見ても特異なものではありません。 しかし、 分類体系に何を求めるのかという点では、日本と海外で考え方に違いがあります。 日本の分類体系は、長く、実際に存在する文書を整理し、管理するという実務を支えてきました。 一方で、電子化や業務の複雑化が進む中では、 • 業務分析
• 記録追跡 • ケース管理 • 横断的統制 といった観点も重要になりつつあります。 その意味では、これからの文書分類は、「どこに綴じるか」だけではなく、 「何の業務記録なのか」を、より強く意識する方向へ変化していくのかもしれません。 そしてそれは、文書を整理するための分類から、業務を理解するための分類への変化とも言えるのかもしれません。 自治体関係者の方は、ぜひご覧ください。 著者の他の文書管理シリーズはここにあります。 ![]() |